シナリオ研究生の頃(6)

エッセイ

シナリオ『青空保育園』

 私がその時書いたシナリオ『青空保育園』は、週刊誌の記事がヒントになっていた。

 まだ日本全体が貧しく、幼稚園や保育園に通う子供はごく少数だった。特に商店や家内工場が多い下町では親たちは忙しく、子供をかまってやる暇はなかった。

女子大生の仲良しグループが、そういう子供たちを集め公園で歌や遊戯を教え、子供たちは楽しみにし、親たちも助かっているという記事が、写真入りで大きく取り上げられていた。

リーダー格の女子大生が「自分は子供が好きだから将来もこういう仕事をしたい。今は雨の日は集まれないが、どこか場所を貸してくれるところがあれば、雨の日も子供向けの本を読んだり、お話し会をしたい」と語っていた。

 記事を書いた人は善意で書いたに違いないが、こんなに大きく取り上げられると困る人もいるのではないか。

たとえばリーダー格の友人に誘われ、ごく軽い気持ちで手伝っている人がいたとする。こんなに大きく取り上げられれば簡単にやめることが出来ない、少なくともやめることに罪悪感を抱くようになるだろうし、リーダー格の女の子ばかり目立てば妬みも生じる。

リーダー格の彼女にしても、これまで仲良し同士和気あいあいとやってきたのに、友達にねたまれ、熱心になればなるほど、売名行為のように見られて迷惑するのではないかと心配だった。

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