私の一番若い日

エッセイ

一番若い今日を、楽しく生きよう

 もう十年も前のことになるだろうか。

NHKの教育テレビ「こころの時代」で、禅文化研究所長西村恵信氏の話を聞いたことがある。

その中に「残りの人生の一番若い今日を、楽しく生きよう」という趣旨の言葉があった。

あまりにも早く過ぎ去る日々を嘆きながら、ただ漫然と日を送り、八十台の初めになっていた私は、思わず襟を正す思いだった。

確かに今日は私にとって一番若い日で、過ぎてしまえばもう二度と返ってこない貴重な一日である。仇やおろそかに過ごすのは、あまりにももったいない。

といって怠け者が急に勤勉になるはずはなく、時折この言葉を思い出しては反省するだけで、また十年経ってしまった。

93歳になれば、どこも痛いところはないというだけでもありがたい、と感謝しなければならないだろう。そうはいっても足は衰え、部屋の中を歩くだけでもいろいろなところにつかまり、よろよろ歩いている。

しかし「今日は私の人生にとって、一番若い日だ」と思うと、何となく元気が出てくるような気がする。

過ぎた過去は後悔することばかりだが、それを嘆いても今更どうなることでもない。 せめてこれからの残り少ない日々を、私にとって一番若い日だと自覚して、元気に一日一日を丁寧に生きていきたいと思う。

コメント

  1. ノリコエール より:

    一番若い日は、何をやるにも元気がでてきます。
    たとえ、何歳でも、生きとし生きる者、皆同じ。

    さて、一番若い今日という日、私は何をやったか?
    桜を惜しみ、シューマンに耳を傾け、ウクライナを憂う。
    桜もシューマンも、この先何年も続くだろうが、ウクライナの悲劇だけは一日も早く終わってほしい。

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