「丸高万柳」(19)

エッセイ

少しも騒音ではなく、私にはむしろ気持ちよく聞こえた

富士霊園は富士山の麓に広い敷地を持つ霊園で、宗派にこだわらなくてさまざまな形のお墓があり、環境としてはいいところである。

つい「静かでいいところ」と書こうとしたが、すぐ近くに自動車のサーキットがあり、私が見学に行った日もレースが行われていて、エンジンのうなる音やタイヤのきしむ音がしていた。しかしそれが少しも騒音ではなく、私にはむしろ気持ちよく聞こえた。

苑内を回るバスもあるし、食事のできる広い休憩所もある。それに真ん中を通じる道路の両側の桜並木も花の時は結構いい眺めになるだろう。

文学者の墓はその奥のほうにあって、一つの石板に六名の名前と代表作が刻まれている。私の場合は「高橋光子 蝶の季節」である。

友人たちと一度見に行ったが、遠い昔のことでよく覚えていないが、一緒に刻まれている名前には有名人はいなかった。それはお互いさまで、私の名前を知っていて一緒になれたことを喜んでいる人もいないだろうから同じである。代金は永代供養も含めて60万円だった。今は少し値上がりしているだろうが安いことには間違いない。

文学者の墓を買う人の中には有名人も多い。確か津村節子さんも買っているはずだが、そういう方は自分のお墓は別にあって、文学者のお墓には万年筆とか記念の品を納めるようにしているらしい。  

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