「丸高万柳」(10)

エッセイ

神田の岩波ホールで映画「黄昏」を見た

坊さんになった柳子さんと最後のあったのは、神田の岩波ホールで映画「黄昏」を見たときで、四谷三丁目に住む丸川賀代子さんも一緒だった。

映画の後お茶を飲み、相変わらず忙しそうにどこかへ寄るという柳子さんと別れて電車で帰りながら「疲れたわね」と丸川さんと私は同時に呟いた。

かつては一番気軽に会える友達だったのに、やはり頭を丸めた姿になじめなくて緊張していたのだろう。

しかしその時柳子さんは、私が編集している同人誌「群青」に入りたいと言い、私は歓迎した。

いつも「柳子、お金がない」と言っているから、同人費が払って貰えるかどうかわからなかったが、たとえ払って貰えなくても、この世界では柳子さんの名前は有名だから、それだけでメリットはあった。

が、私の予想に反して同人費は毎回振り込んでくれた。お金に困らなくなっていることもあっただろうが、若いころ柳子さんも仲間と同人誌を出していたことがあるから、その苦労を知っていたからだろう。

今「群青」で調べてみると昭和61年(1986)4月発行の28号に「吹き溜まり」という作品を、その後も4回いずれもお寺の暮らしに題材をとったユニークな作品を載せている。

柳子さんも小さいながらお寺を任されていると、これまでのように勝手に放浪することも出来ず、三鷹までふらりとやってくることもなくなっていた。

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