「丸高万柳」(18)

エッセイ

三人のお墓には、全部お参りをしている。

私は自分を律儀な人間だとは思ってないが、「丸高万柳」の森万紀子さん、山崎柳子さん、丸川賀代子さんの三人のお墓には、全部お参りをしている。

森万紀子さんの場合は酒田まで取材に行ったとき、高校の同級生たちが何人か集まってくれたが、その時駅に近い泉流寺にお墓があると教えられ、翌日お参りに行った。

昔は酒田十三人衆と言われた豪商の家だったから、本堂に近い場所に亭々と聳える4,5本の松の木に囲まれるようにして、一段高くなって石柱で囲われた一廓がある。

石段を三段ほど上ってその囲いの中に入ると、枯れた松葉の散り敷く一坪ほどの敷地に墓石が三基建っていた。友人たちの話では左手前のお墓がそうだということだったが、裏へ回っても昭和三年建立とだけあって、埋葬者の名前はなかった。

森さんは昭和八年生まれだから両親ではなく、祖父母の誰かが亡くなったとき建立したのだろう。もちろん立派なお墓だった。

みんなそれぞれ立派なお墓に納まってと思いながら、私は富士霊園にある文学者公苑の自分のお墓のことを思った。

郷里には父母のお墓がある。そこに入ろうと思っていたが、もう長い間帰ったことがないし、知った人たちもみんな亡くなっている。第一、郷里まで納骨に行ってくれる人も、そのうちいなくなるだろう。そのことを考えての決断だった。

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