高い山に上るようなもの
歳を取るということは、高い山に上るようなものかもしれない。いつの頃からか、そう思うようになった。
私がそんなことを思うのは、南に高い山や小高い丘があるところで育ったせいかもしれない。小高い丘に上ると、海までの景色が一望のもとに見渡せる。高く上れば上るほど遠くまで見渡せ、まるで箱庭のように整然とした景色になる。
両親に連れられてくねくねと曲がった道を遠くまで歩いた親戚の家も、直線距離にすると案外近かったり、あの川はああいう風に曲がって海に入るのかと、新しい発見も多かった。
それと同じように、歳をとると過去のことがよく見えてくるような気がする。あの時のあの人の言葉はこういう意味だったのかと初めて気づき、お礼を言いたくても、その人はもうこの世にはいない。
今更気がついてももう遅い。そんな気もするが、気がつかないままよりはいいのではないかと自分を慰めたりしている。
それにしてもこれまでどれほど多くの人の世話になってきたことか。人だけではない。歳をとればとるほど、自然の恵みということをつくづくと感じる。
自分もその自然の一員で、やがてそこへ返っていく身で、その日も近いということがわかってくるからだろうか。
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