「蝶の季節」(3)

エッセイ

四谷三丁目のバス停前の本屋で

応募した原稿のことは期待してなかったが、忘れてはなかった。

婦人公論の時は最終予選に残っていることを知らせてくれたが、今回はそういうこともなく日は過ぎ、三月の下旬になっていた。

当選作は四月七日発売の五月号に載るのである。もうとっくに決まっているはずで、私が購読している新聞には発表は載らなかったのだと思っていた。

三月二十三日だったか二十四日だったか、NHKの脚本研究会に出かけるとき、四谷三丁目のバス停前の本屋で、未練がましく「文学界」を手にし、目次を見ると小さな活字で「文学界新人賞中間発表」とあった。

ページを開くと、半ページ使って千三百近い応募作品の中から、次の作品が一次予選を通過とあって、五十ほどの題名と作者名が載っていた。「蝶の季節」もあった。

満更駄目でもなかったのだと嬉しくなり、「文学界」を買い、脚本研究会が開かれる会議室に入ると、「二、三年のうちには文学界新人賞をもらって見せますからね」と冗談のように言いながら、中間発表に出ている自分の名前を見せた。

「『蝶の季節』を小説にしたのなら、いい線までいけるんじゃないの」と言ってくれる人もいたが、「でも、今度は駄目よ。もう決まっているはずだから」  私はそう答え、その日が選考日だということも知らなかったし、まして自分の作品が最終選考に残っていることも知らなかった。

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