「丸高万柳」(2)

エッセイ

この人自身が芸術だと思わせるようなところがあった。

山崎柳子さんは瀬戸内晴美さん、河野多恵子さんなど私より少し先輩のグループに属し、早くからその才能は注目されていたが、小説については門外漢だった私は知らなかった。

そして私のような新参者が芥川賞候補になるのだから、才能のある人はもっと華やかな仕事に憧れ、小説を書かなくなっているのではないかと思っていた。

が、そうではないと私に教え驚かせた人である。

荻原葉子さんの「天上の花」と争い、票が割れどちらも受賞できなかったが、柳子さんの「眼なき魚」が候補作として文藝春秋に掲載されたとき、その天衣無縫というか自然に流れ出るような才能に驚いた。

この人はこの人自身が芸術だと思わせるようなところがあった。

その頃「文学界」の編集部が芥川候補作家を十人ほど招待して一席設けてくれた。

女性は私と森万紀子さんと山崎柳子さんの三人で、それからも時々会おうということになり、山崎さんが丸川さんを誘ってきて4人になった。

丸川さんは前にも書いた「巷のあんばい」で婦人公論新人賞をもらった人で、そのテレビドラマを見て私も小説を書きたくなったのだから、やはり縁があったのだろう。

最初は都心の喫茶店で会っていたが、団地の2DKの部屋に住んでいる私のところに集まることになった。スケジュールを合わせるのが大変だったが、それでも7,8回は集まっただろうか。

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