百聞は一見にしかず

旅行

中国、敦煌

 中国・敦煌の莫高窟に行ったとき、期待してなかったと言えば言い過ぎだが、大体のことはわかっていると思っていた。

というのはテレビの特集番組を見ていたからである。テレビカメラは下からは見えない高いところも近くで写し、細かいところはアップで見せ、しかも専門の研究者の解説付で、たっぷり2時間近く見せてくれる。

ツアーで行って暗い窟内を、ちょっと覗くのとはわけが違う。そう思っていたが、違っていた。

 私が行ったのは11月の寒い頃で、おかげで観光客は少なくてゆっくり見ることができた。

 最初は320窟、うす暗い窟内で目が慣れてくると、目の前に色鮮やかな壁面が浮かび上がってくる。盛唐時代のものだが、よく見ると金粉も残っている。

狭い窟内で向かい合っていると、千三、四百年も前に、これを丹念に壁に描いていた人の息使いまで感じられるようで感動した。

「百聞は一見にしかず」という言葉はあるが、テレビの映像などは情報として見ているので、聞のほうに入るのではないだろうか。 今は映像文化の時代で、映像が何よりも幅を利かしているが、映像を見てわかったつもりになるのは、危険なことかもしれないという気がする。実際に自分の目で見ることが、大事なのである。

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