「ガリバー旅行記」の作者

旅行

アイルランド

 日本でもそうかもしれないが、外国の教会には有名人のお墓があることが多い。

アイルランドの首都ダブリンの聖パトリック大聖堂でも、床に「ガリバー旅行記」の作者ジョナサン・スウィフトと愛人ステラの墓碑銘があった。地下に埋葬されているのである。スウィフトは国を代表するこの教会の首席司祭でもあった。

司祭が愛人を作ってもいいの?私のようにキリスト教のことはよく知らない者の素朴な疑問である。いいとしても堂々と一緒に葬られているのは、何とも人を食った話のような気がする。

私がそう思うのはスウィフトの人間嫌いがあまりにも有名だからである。「ガリバー旅行記」は子供向けの楽しい話のように思われているが、本当は人間に対する痛烈な風刺である。彼はまたこんなことも言っている。「人間は自然が地上に這うことを許した、最も有害な害虫である」と。

今になってみると、彼の言う通り人間が地球の環境を壊し、他の生物に被害を与えているのだから、先見の明があったと言えるだろう。三百年も昔に言っているのである。

 調べてみると、ステラは知り合いの家の一人娘で、本名はエステで、彼を追ってアイルランドまで来ている。彼女が亡くなったとき彼は嘆き悲しみ、自分が死んだら彼女のそばに埋葬してほしいと言っていたそうである。 そんな話を聞くと、人間嫌いの偏屈おじさんのイメージが、人間味のあるやさしいおじさんに変わり、「ステラと一緒に葬られてよかったね」と言ってあげたくなってくる。

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