和食の文化

旅行

 これもロサンゼルスでの話である。その日の昼食は日本食になっていて、ツアーの誰もが楽しみにしていた。味が全然ないアメリカンステーキをはじめ、パンもコーヒーもみんな不味い。日本食が恋しくなっていたところである。カウンター席だが日本風な作りの店で、まず味噌汁が運ばれてきた。

私たちは当然、すぐご飯や他のおかずも出てくるものと思っていた。が、一向にそんな気配はない。一人が気づいて言った。

「これ、味噌スープでしょう。スープを飲まないと次が出てこないのよ」

 まさかと思うが一理あることなので、味噌汁に口をつける人もあった。しかしすぐ「辛い」と顔をしかめた。

「あなた、行って聞いてきてよ」

メンバーの中に英語の達者な人がいて、みんなに頼られていた。彼女は気軽に立って奥へ行ったが、しばらくして浮かぬ顔で出てきた。いくら言葉が達者でも、食文化の違いについてお互いに納得するように説明するのは難しかったのだろう。

こちらの人は出されたものを順番に食べるだけで、日本人のように全部並べて置いて、好きな物から箸をつけ、しかも舌の上で複数の食べ物の味を混ぜ合わせ食べるような器用なことはできないのだ。 私ならそう説明するところだが、あいにくそれだけの語学力がないので黙っていた。

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