ムクドリたちの話(5)

ムクドリたちの話

ベランダで空を見上げながらぼんやり立っているときがあります。

最初に飛び立つ一羽が群れのリーダーでしょうが、それがいつも同じ鳥かどうか、まゆみには見分けがつきません。

が、とにかく百羽以上のムクドリたちが一斉に飛びたち、きれいな編隊を作りながら旋回し、次第に高度を上げ黒い点となって飛び去って行くのです。

歩いて四、五十分のところに、小金井公園の森がありますが、そこをねぐらにしているのでしょうか。それとももっと遠くまで帰るのでしょうか。とにかく夕焼け雲の中に吸い込まれるように消えていくのです。

するとすぐ夜が来ます。まゆみとしては急に寂しくなるところですが、幸いなことにお母さんが帰ってくる時間です。お母さんは夕食の支度のための買い物をして、急ぎ足で帰ってくるのですが、そんな時まゆみはベランダで空を見上げながらぼんやり立っているときがあります。

「きっと私の帰りを待っているんだわ。寂しい思いをさせて可哀そう」

お母さんはそう思いながら、元気よく「ただいま。今日はまゆみの好きなライスカレーよ。ちょっと待っていてね。すぐ作るから」と言いました。

「お母さん、ムクドリは春や夏はどこにいるの? 渡り鳥なの」 「ムクドリ?」いきなりムクドリの話が出てお母さんはびっくりしたようです。

(お知らせ 「ムクドリたちの話」はまだつづきがありますが、次回からしばらく「オーロラを見に」を掲載します。)

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