ムクドリたちの話(2)

ムクドリたちの話

一番好きなのは、黄色に紅葉する秋のこの季節です。

まゆみの住んでいる団地の近くには、広い敷地の中に十三階建てで、屋上にへリポートまであるNTT開発センターがあります。

その正門前の広場を境にして道は大きく曲がり、正門前までは桜並木で、それから銀杏並木になるのです。

開発センターでは多くの人が働いていて、朝夕のラッシュ時には15分おきに最寄りの駅からのバスが通勤客を運んできます。バスは少し遠回りになるのですが、市役所がある桜並木の道をやってきて、帰りもそちらの道を通るのです。

ですから銀杏並木の道のほうは、車も人の往来も少なくていつも閑散としています。

でも銀杏並木だけでも四季の移り変わりで様々な風景を見せ楽しませてくれます。

葉を落とした細い枝が、冬の青空の中にすくっと伸びて震えている風景もいいものですし、春先になるとその枝先に青い芽が点々と芽吹き、次第に大きくなり、夏は青々とした葉を茂らせ、涼しそうな木陰を作ってくれるのです。  

なんといってもまゆみが一番好きなのは、黄色に紅葉する秋のこの季節です。まゆみは学校から帰ると真っ先にベランダに出て、銀杏並木を眺めるのです。銀杏並木は一日ごとに黄色を増し、風もないのにはらはらと葉が散り、それがちょうど金の小鳥が舞っているように見えるときもあります。


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