ムクドリたちの話（４）

こうして今日も無事に過ごせたことを感謝しなくちゃ

ムクドリたちがどんなことを話しているのか、まゆみにはわかりません。でも想像はつきます。

「やあ、君か。今日はどうだった？　たらふく食ったかい」

「いやあ、駄目だね。遠くまで行ったんだけど、４，５日前にも我々の仲間が来て、すっかり荒らして行ったとかで、ミミズ１匹残ってやしない。草の実には少しありつけたけどね」

「世知辛い世の中になったもんだね」

「セチガライ」などという言葉の意味はよく分からないのですが、大人がよく言っているのでまゆみも使ってみました。急に大人になったような気がしました。

「われわれの仲間が増えすぎたのかもしれんな。こんなことでは今年の冬が越せるかどうか心配だよ」

「大丈夫、大丈夫、『餌は天下の回りもの』というからな」

「明日は明日の風が吹くさ」

「だけど、こうして今日も無事に過ごせたことを感謝しなくちゃな」

「そうだそうだ。怖い鷹や鷲に追っかけられることもなかったしな」

まゆみには鳥たちがそんな話をしているように思えるのです。 彼らは１時間ちかくもそんな話をしながら仲間が集まるのを待ち、それから１羽が飛び立つのを合図に、一斉に飛びたつのです。